用途:
添加剤を含む油性流体(エンジン油、ギヤ油、油圧作動油、タービン油など)
一般的な潤滑油を使用する機械はほぼ全て本オイルセンサーを使用
機械の過負荷運転の状況、潤滑油の劣化(酸価、添加剤残存量)状態、コンタミ(摩耗粉、水、燃料等)の発生から増加などをモニタリング
WearSensWS3000の使用事例
添加剤を含む潤滑油はエンジン油、ギヤ油、タービン油、コンプレッサー油などこの世の中には無数の機械用潤滑油があります。使用できる油入機械は多岐にわたります。WearSensはすでにエンジン、ギヤボックス、ガスタービン、油圧作動装置などに使用されていますが、お客さまの油入機械でモニタリングしたい部位から潤滑油がセンサーまで流れていればモニタリング可能です。
お客さまがお持ちの大切な機械でトラブルがあってはならない機械、あるいはトラブルがよくある機械にぜひWearSensをお使いください。潤滑油の電気伝導率、比誘電率、温度をセンサーが計測し、すぐにcmcで開発した自己学習アルゴリズムが温度一定条件の電気伝導率と比誘電率を正確に計算します。
潤滑油の状態変化はこの温度補正した二つのパラメータの変動で表現することができます。
図 潤滑油の様々な現象と電気伝導率と比誘電率の動き
また、お客さまの要望で監視したい項目をできるだけ定量的に可視化することを要望されることが多いですが、その場合、WearSens Index(WSI)を作成して項目によっては計算式を作り、気になる項目の増減を可視化することも可能になりました。
計算式を作るために、予備試験を最初に実施します。例えば、試験開始前の潤滑油のオフライン分析値とオイルセンサーを稼働した最初の電気伝導率と比誘電率の温度補正値およびオイルセンサーを稼働させ1週間程度経過した時のオフライン分析値とその時点での電気伝導率と比誘電率の温度補正値を用いて計算式を作成します。
一度作成した計算式を用いて必要な項目の変化を可視化します。また、その変化幅があらかじめ設定した警告ライン以前にお客さまに異常値に接近していることを知らせることも可能です。
cmcのオイルセンサーは正確な電気伝導率と比誘電率と温度を独立して計測しますので、気になる項目の数値もオフライン分析値に近い数値を示しますが、当社では、より正確に数値を安定的に取得するために、日本および中国の大学と連携して数多くの取り組みを実施しております。
今後さらに精度の高いオンライン分析を可能にするシステムを開発しみなさまのお手元に届けられるよう精進してまいります。
さて、世の中に機械の種類はかなりありますが、ここでは風力発電の増速機の事例を紹介します。(本ホームページでは、風力発電設備に続き、そのほかの機械についても事例をその都度ご紹介していきます)
我が国は、2050年までにカーボンニュートラルを目指しておりますが、その中でも特に再生可能エネルギー、中でも洋上風力発電は注目されています。皆さんも洋上で重要な機械が故障した時のことを想定してください。
故障後のメンテナンスとダウンタイムによる損害は陸上と比較してかなり大きくなることが同定されています。その対策はN E D Oを中心にして最近動きが活発化しています。
グリーンイノベーション基金事業(https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101505.html)
(当社も東京大学先端科学技術研究センター飯田特任准教授ご指導のもと、株式会社北拓様が採択された『浮体式風力発電用成長型O&M Digital Platformの開発』のオイルセンサーシステムでお使いいただくことになりました。)
増速機(図1)が故障すると増速機自体全て洋上で交換しなければならないケースも想定されます。そのために、できるだけ初期からギヤボックス内を遠隔監視するシステムの開発が求められています。
ヨーロッパ、中国では、振動センサーやろ過装置と併用し、WearSensで増速機の損傷リスクを最小化する検討を数年前から実施してきており、ヨーロッパの大手電力会社の洋上風力発電設備にはすでに導入が進んでいます。
また、ヨーロッパではWearSensでモニタリングして適切なタイミングで増速機ギヤ油の交換を行うケースも増えてきました。図2はヨーロッパの大手風力発電事業を行う会社と10年にわたりWearSensデータから算出した計算式によるギヤ油内の添加剤消耗曲線を可視化し、定期的オイル交換(5年間)と比較したデータ(イメージ図)です。このようにして添加剤の消耗度を可視化することにより、定期的なオイル交換よりも長時間ギヤ油を使用できることがわかりました。
オイル交換に関わる人件費、オイル費用等の削減することがさまざまな実証試験により確認されています。(もちろん、イレギュラーなケースが多発することもあり、その際にWearSensは異常を早期にその都度察知し、振動センサーやそのほか全てのセンサーの情報に貴重な情報を加えています。)
最近は図3のように、洋上風力発電へギヤ油を積んだコンテナをサイトへ船で運び、ギヤボックスまでギヤ油を引き上げギヤ油内の洗浄とオイル交換を実施する会社も数社登場するようになりました。(図3はドイツSpeedwind Offshore社の実例、モニタリングにはWearSensが使用されている)
図1 風力発電の仕組み(電気事業連合会ホームページから)
図2 増速機ギヤ油の10年間の添加剤消耗(緑)とオイル交換時期(定期オイル交換との比較)
図3 Speedwind Offshore GmbHの洋上風力発電オイル交換
https://www.speedwind-offshore.com/index_en.html
増速機ギヤボックスの遠隔監視の主役は以前から振動センサーで、摩耗粉の発生状況を調べる鉄粉センサーなども使用されています。オイルセンサーの導入はそれよりもかなり遅れておりましたが、オイルセンサーはギヤボックス内の異常の兆候を早期に発見するため、現在ドイツでは産・官・学でオイルセンサーを加えた実証データ取りが盛んに行われています。
2022年後半からは中国第2位の風力発電メーカである遠景科技集団(ENVISION)でもWearSensを設置した増速機ギヤボックスの実証試験を開始する予定です。
図4 2021年中国における新設風力発電設備企業別ランキング(単位:万KW)
今後中国では風力発電設備の増設が繰り返され、技術的にも世界最高レベルにまで進化してきました。当社関連会社、集億思智慧科技(GES Intelligence technology)は、中国での実証試験成功に向けて南京市にある東南大学の支援を受けデータ解析および解析システムの開発を実施する予定です。
振動センサーは、ギヤボックスに振動が発生し始めてセンサーが作動します。振動が始まるということはすでにギヤボックス内で異常が起き始めたことを示すものであり、ある一定の損傷が起きた可能性を示唆します。人間の細胞は蘇生しますが一度傷ついた機械は蘇生しないので故障のリスクは高くなります。
WearSensはギヤボックス内で過負荷運転の状態を把握することができます。図5に振動センサーと同時にWearSensの過負荷運転状態を青色のシグナルで示し、振動センサーの赤色のシグナルと比較しました。過負荷運転が重なり、やがて振動するところまで進行すれば振動センサーが作動します。
WearSensは短時間にデータを収集するため、比較できるように振動センサーのデータ並みの速度へ加重平均したシグナルへ変換(緑色)し比較すると、振動センサーより過負荷運転によるシグナルが早期に異常を示すシグナルを発していることがわかります。(振動は過負荷運転が継続して起きていると振動が発生してきたことがわかりますね。振動はすでにある意味損傷発生、過負荷運転は損傷は発生していない段階で金属と金属の間で激しいぶつかり合いが発生する、いわば損傷前の危険な兆候と解釈できるでしょう)
図5 過負荷運転状態の指標(WSI、青と緑)と振動センサーシグナル(赤)と比較
以上WearSensで風力発電設備増速機ギヤボックスの状態監視事例について説明しましたが、WearSensはエンジン、コンプレッサー、タービン、油圧作動装置など数多くの添加剤を含む潤滑油が入っている油入機械に使用することができます。そのほかにも多くの事例をここでは紹介しておりません。今まで説明してきた内容についても一部にとどめておりますので、詳細についてご関心ある方はぜひ問合せに必要事項と問合せ内容を記載してお送りください。お待ちしております。