cmc インスツルメンツで開発した革新的なセンサーシステム
cmc インスツルメンツアジア株式会社

オイル分析について(血液検査との比較)

血液検査について

人間の血液は、ご存知の通り、体内で常に製造され、外部から危険なウィルスなどが入るとそれと闘う抗体が現れたり、汚れてくると腎臓で濾過したり、汗として外に排出したりして、常に体内で浄化する機能があります。これにより緻密で複雑な人間の体も健康な体が維持されます。新型コロナウィルスのように、新たな敵が入ってくると、死に至ってしまうと言う最悪の事態もありますが。

私たちは定期的に健康診断をして、自分が健康体か、体のどこかに不具合はないか、調べています。

みなさんもご存知の通り、その中で最も簡易的に健康状態を把握する手段の一つに血液検査があります。今日の分析技術の進歩により、血液中の成分を詳しく調べることで、人間の健康状態は血液検査でかなりの部分で把握できるようになったと言えるでしょう。

定期的に血液検査することで、例えば、血糖値が徐々に高くなっていくと糖尿病になりつつあると判断することができ、さらに詳しく検査することにより、具体的な治療方法が見つかっていきます。また、運動や薬を投与することなどで、糖尿病が改善していく過程も、血液検査で把握することができます。

オイル分析について

さて、血液と比較して、機械の中で働くオイルの役割は血液とどう違うのでしょうか?

オイルは機械をスムーズに動かすために欠かせない存在のひとつです。 オイルには、機械の摩擦や摩耗を防止する働きを持つことはもちろん、機械のさびを防いだり、稼働する機械を冷やしたりするなどの効果があります。 さらにオイルは、接触し回転する機械同士の隙間を埋める密封作用もあります。

しかしながら、油入機械の場合は、人間の体ほど健康な状態を維持する機能はありません。一般的にオイルフィルターが腎臓の役割の一部を果たして外部から混入した異物や摩耗粉などを除去し清浄化しますが、血液のように体内で継続的に作り出されるのではなく、最初に充填したオイル中の添加剤は徐々に消耗し、オイルの添加剤を除いた成分(ベースオイル)は酸化劣化していきます。

したがって、オイルは確実に、徐々に、そしてあるときは急激に劣化していくことになり、オイルとしての機能を果たさなくなってきます。

また、オイルの劣化が進むにつれて、機械の状態も徐々に悪くなり、最悪は故障に至るケースもあります。

機械が故障しては、膨大なメンテナンス費用がかかりますし、最悪は機械を取り換える必要もあり、思わぬ追加予算により、会社の採算も悪化してしまうなど、由々しき事態を招くこともあるのではないでしょうか?

私たちは、新たな産業革命が起きる毎に新しいオイルを開発してきました。オイルの歴史とともにオイル分析技術も進歩し、より正確な分析によるオイル及び機械の状態把握が可能となり、今日では、機械のトラブルの原因究明にもこのオイル分析はなくてはならない手法となっております。

ここ半世紀以上もの間、油入機械のトラブルを回避するために、オイルの定期分析は欠かせない項目となっています。

人間の健康診断で、血液を採取し、分析に出して、あとで結果を知らせてもらう仕組みがあり、潤滑油も同じようなことをしているわけで、オイルの定期分析も、機械を健全に保つために重要な役割を演じてまいりました。

また、石油メーカと機械メーカからは、オイルが正常な範囲にあるかどうか、潤滑油の管理基準が推薦され、それに基づきみなさんは、メンテナンスの基準の一つに潤滑油の品質管理項目が必ず含まれていることでしょう。

例えば、管理基準の範囲内であれば、継続してそのままオイルを使用し、オーバーしていたら、オイルの更油を行ったり、フラッシングするなどしてオイルの交換をしたりするなどの対応をしています。また、定期的メンテナンスの一環で潤滑油はその時に必ず交換をするなど、ある一定時間経過したら品質の良し悪しは関係なく潤滑油の交換を行っているケースもあります。

図1では、時間軸に対する機械の稼働状態を表しています。実際、油入機械のほとんどはオイルの定期分析をしていますが、機械の状態は刻一刻と変化しており、その詳細な挙動は、定期分析では全く把握することはできません。

オイルと機械の状態を時間軸で管理する最新の技術開発

みなさんもご存知の通り、オイルの寿命は機械の使用条件によって千差万別です。機械の使用条件は、その時の状況に応じ変化しますし、過負荷運転や、稼働率の上昇、悪天候や物理的な損傷などで、定期的なメンテナンスのタイミングよりも早くに機械は壊れることもありうるでしょう。

オイルの定期分析は、今までの歴史の中で、油入機械の長寿命化を図る上で重要な役割を演じてきましたが、AI, IoT, センシング技術の発展により、オイル中の電気信号の変化を時間軸で解析することで、定期分析では得られない、タイムリーな状態監視技術が確立されつつあります。

第4次産業革命は、ドイツから始まったと言われておりますが、ドイツ政府は、産官学連携で数多くのプロジェクトを推進してきました。その中で、cmc Instrumentsのオイルセンサーも生まれました。

cmc Instrumentsで開発したオイルセンサー

当社、親会社である、cmc Instruments GmbHは、マウンツ教授(イシュトヴァーン大学(ハンガリー))を筆頭に15名からなる科学者・エンジニア集団です。私たちは、電力、化学、石油、鉱工業、自動車、建設、物流業界はじめ数多くの産業界で、測定、制御、分析技術製品の開発、製造、販売をしています。その中でも特に、様々な産業で稼働するエンジン、ギヤ、タービン、高圧変圧器、コンプレッサーなどの油入機械の遠隔監視を可能にするオイルセンサーの開発は、世界中の油入機械の遠隔監視を可能にする素晴らしい発明であります。

第4次産業革命を迎え、産業界を支える皆様の重要な機械は、従来も、振動センサー、圧力センサー、温度センサー、微粒子センサーなど、数多くのセンサーで守られておりますが、cmc InstrumentsGmbHが手掛けるこのオイルセンサーは、ナノレベルで、オイル中の微細な変化を正確に捉え、オイルの側から、機械の過負荷運転の状況やオイル中に発生する摩擦摩耗に関係する微粒子や水分、燃料、クーラント、その他の潤滑油などのコンタミ、オイル中の添加剤の消耗、オイルの酸化劣化などを時間軸で検知することを可能にした、革命的なセンサーシステムです。

この革新的技術を開発してから、まだ数年経過したに過ぎませんが、この技術を採用し、自社で使う重要な油入機械のモニタリングを開始しているお客様がヨーロッパ中心に増えています。

図2も、図1と同様に時間軸に対する機械の稼働状態を表していますが、cmc Instrumentsで開発したオイルセンサーにより、機械の稼働状態を経時変化毎に把握・監視することが可能になりました。